「デジタル庁らしい青と白」にそろえるだけでは、読みやすい資料にはならない。公開配布されている dads-powerpoint は、デジタル庁デザインシステム(DADS)の文書を参照しながら、編集可能なPowerPoint資料を作成・改稿するためのスキルだ。配色より先に、何をどの順で伝えるかを整理する点に特徴がある。
以下は配布ZIP内の仕様と参照資料を読んだ整理であり、生成したPPTXの品質を検証したものではない。
デザインの前に説明の順序を決める
同梱の SKILL.md は、新規作成や全面改稿で、目的と読者、主要テーマ、論点同士の関係、必要な根拠を整理してからスライドをデザインする手順を定めている。各ページの役割と仮タイトル、表現方法まで構成案にまとめる。
特に実用的なのは、情報が収まらないときの扱いだ。本文を小さくする前に、文章の整理やページ分割を行う。タイトルも一律の結論文にせず、用語の紹介ならテーマ、疑問への説明なら問い、データの読み取りなら要点と、ページの役割で選び分ける。
単なる見た目の指定ではなく、説明の組み立て方を含む作成ガイドとして読むと、このスキルの狙いが分かりやすい。
公式の原則とスライド独自の設定を分ける
DADSはもともとウェブサイトやオンラインサービスなどを念頭に置いたデザインシステムだ。この配布物も、デジタル庁が作成・公認したPowerPointテンプレートではないと明記している。
白地にBlue-900を使う配色、16:9の画面比率、本文22ptといった値は、スキル側の既定値。公式の必須仕様ではなく、利用者の指定や投影環境に応じて変更する設定だ。CSSのpxをPowerPointのptとしてそのまま扱わない、という単位の区別もある。
ZIPにはカラー、タイポグラフィ、アクセシビリティなどのDADS文書が同梱され、数値の色は公式の design-tokens v2.0.1で補っている。元の色値と、それを「本文」「主色」などへ割り当てる独自設定を分離した構成だ。
ただし、画像やフォントファイルは同梱されていない。Noto Sans JPを指定しただけで、利用環境への導入やPPTXへの埋め込みまで済んだことにはならない。
作成用の指示と品質保証は別
実際のPPTX作成・編集には、利用環境のPresentationsスキルを併用する設計になっている。Artifact Tool向けの任意ヘルパー dads-theme.mjs もあり、テキスト、表、基本フレーム、発表者ノートの出典記録などを扱う。ZIP単体を汎用の変換ツールと考えるより、制作環境に足す設計ガイドと捉えるのが近い。
確認事項は見た目だけではない。色だけで状態を伝えずラベルを添えること、全サイズの文字で背景とのコントラスト比4.5:1以上を確認すること、見出しや本文を画像にせず編集可能にすることが指定されている。
一方、ヘルパーの境界チェックは文字のはみ出しや要素同士の重なりを保証しない。全ページをレンダリングして確認し、PowerPointが使えない環境では、その上でのフォント置換や読み順まで検証済みとしない。指示が丁寧でも、出力が自動でその条件を満たすわけではない。
試すなら、まず短い資料で構成案と出力を見比べたい。文字を縮めずに整理できているか、表や本文を編集できるか、出典が残っているか。配色の再現度より、そこを確かめるほうが、このスキルを選ぶ判断材料になる。
参考
- dads-powerpoint 配布ZIP(
SKILL.md、references/sources.md、references/slide-style.md、references/implementation.md) - デジタル庁デザインシステム
- DADSのお知らせ(Markdown配布・更新)
- 公式デザイントークン v2.0.1